時事情報・その他
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本記事は日帰り手術を行う眼科クリニックを対象に令和4年の診療報酬改定で施設基準が大きく変更となった短期滞在手術等基本料1についてお伝えしています。
実際の算定にあたって
イ 麻酔を伴う手術を行った場合 2,947点
ロ イ以外の場合 2,718点
のいずれで算定するのか、
全身麻酔は何を指すのか、
笑気ガス麻酔と併算定できるのか
などは「算定にあたっての注意点」をお読みください。
短期滞在手術等基本料とは短期入院をして行う手術を包括的に評価したもので、入院日数によって
短期滞在手術等基本料1:日帰り
短期滞在手術等基本料2:1泊2日
短期滞在手術等基本料3:4泊5日まで
に分かれます。
このうち、短期滞在手術等基本料2はほとんど算定されていなかった状況を踏まえ、令和4年の診療報酬改定で廃止となりました。
日帰り手術を実施している眼科クリニックに関係してくるのは短期滞在手術等基本料1で、従来麻酔科医の勤務が必要であったため算定のハードルが高かったのですが、令和4年の診療報酬改定で施設基準が変更となり麻酔科医が勤務していない多くの眼科医院でも算定が可能となりました。
短期滞在手術等基本料2が廃止、3の対象の追加、などもありますが、ここでは眼科クリニックに関連する短期滞在手術等基本料1の変更点についてお伝えします。
改定前
短期滞在手術等基本料1(日帰りの場合) 2,947点
改定後
短期滞在手術等基本料1(日帰りの場合)
イ 麻酔を伴う手術を行った場合 2,947点
ロ イ以外の場合 2,718点
改定前
【施設基準】
短期滞在手術等基本料にかかる手術が行われている日において、麻酔科医が勤務していること。
改定後
【施設基準】
短期滞在手術等基本料にかかる手術(全身麻酔を伴うものに限る。)が行われている日において、麻酔科医が勤務していること。
改定前
15項目
改定後
38項目
今回の変更の内、施設基準にありました「麻酔科医が勤務していること」の前に(全身麻酔を伴うものに限る。)という文言が追加されたことにより、局所麻酔で手術を行う眼科クリニックにとっては大きな要件緩和となりました。
短期滞在手術等基本料に関する施設基準は、「基本診療料の施設基準等」の他、下記のとおりとする。
1 短期滞在手術等基本料1に関する施設基準
(1) 手術を行う場合にあっては、術後の患者の回復のために適切な専用の病床を有する回復室が確保されていること。ただし、当該病床は必ずしも許可病床である必要はない。
(2) 看護師が常時患者4人に1人の割合で回復室に勤務していること。
(3) 手術を行う場合にあっては、当該保険医療機関が、退院後概ね3日間の患者に対して 24 時間緊急対応の可能な状態にあること。又は当該保険医療機関と密接に提携しており、当該手術を受けた患者について 24 時間緊急対応が可能な状態にある保険医療機関があること。
(4) 短期滞在手術等基本料に係る手術(全身麻酔を伴うものに限る。)が行われる日において、麻酔科医が勤務していること。
(5) 術前に患者に十分に説明し、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」における別紙様式8を参考として同意を得ること。
2 届出に関する事項
短期滞在手術等基本料の施設基準に係る届出は、別添7の様式 58 を用いること。
届出には麻酔科医の記載欄がありますが、届出様式に
「2 麻酔科標榜医は全身麻酔を伴う手術等を行う場合のみ記入すること。」
と記載されている通り、全身麻酔を伴う手術を行わない場合は記入は不要です。
私のクライアント医院さんも全身麻酔を行わないため、空白で提出され既に施設基準の認定通知を受け取ってらっしゃいます。
短期滞在手術等基本料1の対象が今回の改定で38項目に増加しました。
その項目の内、眼科クリニックに関連するものを抽出しました。
K202 涙管チューブ挿入術 1 涙道内視鏡を用いるもの
K217 眼瞼内反症手術 2 皮膚切開法
K219 眼瞼下垂症手術 1 眼瞼挙筋前転法
K219 眼瞼下垂症手術 3 その他のもの
K224 翼状片手術(弁の移植を要するもの)
K254 治療的角膜切除術 1 エキシマレーザーによるもの(角膜ジストロフィー又は帯状角膜変性に係るものに限る。)
K268 緑内障手術 6 水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術
K282 水晶体再建術
対象が増加したことで経営への影響も大きくなりましたので自院で算定されるのかご検討いただくと良いでしょう。
イ 麻酔を伴う手術を行った場合 2,947点
ロ イ以外の場合 2,718点
こちらについては疑義解釈で以下の通り明示されましたので局所麻酔で手術を行う眼科医院では「ロ イ以外の場合 2,718点」での算定となります。
問 13 区分番号「A400」の「1」短期滞在手術等基本料1の「イ 麻酔を伴う手術を行った場合」における「麻酔」とは、具体的には何を指すのか。
(答)医科点数表第2章第 11 部に掲げる麻酔のうち、区分番号「L009」麻酔管理料(Ⅰ)及び区分番号「L010」麻酔管理料(Ⅱ)の対象となる
厚生労働省 疑義解釈資料の送付について(その7)
・ 区分番号「L002」硬膜外麻酔
・ 区分番号「L004」脊髄麻酔
・ 区分番号「L008」マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔
を指す。
麻酔科医の勤務の判断基準となる、全身麻酔は何を指すのか?という点については下記の通り明示されています。
問 14 区分番号「A400」の「1」短期滞在手術等基本料1の施設基準における「短期滞在手術等基本料に係る手術(全身麻酔を伴うものに限る。)が行われる日において、麻酔科医が勤務していること」について、「全身麻酔」とは、具体的には何を指すのか。
(答)医科点数表第2章 11 部に掲げる麻酔のうち、
厚生労働省 疑義解釈資料の送付について(その7)
区分番号「L007」開放点滴式全身麻酔及び
区分番号「L008」マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔
を指す。
上記の全身麻酔とは何を指すのか、の項目に記載した通り「L007」開放点滴式全身麻酔は全身麻酔である、と示されましたので笑気ガス麻酔を使用して開放点滴式全身麻酔で算定する場合は麻酔科医の勤務が必要となります。
一方で「L000」迷もう麻酔は疑義解釈上全身麻酔に指定されていませんので、本記事執筆時点(5月6日)で最新の「疑義解釈資料の送付について(その7)」においては麻酔科医の勤務は不要である、と読み取ることができます。
こちら今後の疑義解釈等で別の判断が下される可能性もありますので適宜情報に注意していただければと思います。